急ピッチで進む再開発
二〇二〇年のオリンピックをきっかけにか、急ピッチで都心の開発が進んでいます。旧中央郵便局を新しくしたJPタワーや虎ノ門ヒルズに加え、東京駅日本橋口では「あべのハルカス」を超える高さ日本一、三九〇メートルの高層ビル建設が発表され(三菱地所、平成三九年完成予定)、有楽町でも江戸切子をモチーフにした外観が特徴的な「東急プラザ銀座」(東急不動産)が来年三月三十一日に開業予定となっています。虎の門の再開発に伴いホテルオークラ本館の建替えが決まったのも記憶に新しいところではないでしょうか。
その他にも最近ではイオンモール常滑が開業し、海外からの爆買い客を取り込もうとしています。地域としては喜ばしいことですが、セントレアにとっては顧客を奪われることにもなり地域内での競争は激化することでしょう。
日本郵政の隠れ資産
日本郵政グループは今年の十一月四日に上場しましたが、十二月十四日現在の時価総額は日本郵政が八兆八千億円、ゆうちょ銀行が七兆九千億円、かんぽ生命が二兆円。日本郵政が他二社の持株会社であることを考えれば、日本郵政自体はマイナス一兆一千億円のネガティブな価値しかないと評価されているようです。
ところでこの日本郵政の持つお宝資産と目されているのが「不動産」です。郵便物を鉄道で運んでいた時代の名残から保有している駅前一等地の価値は以前から知る人ぞ知る優良資産でもあり、簿価で二兆五千億円程度、大手デベロッパー並の規模なのです。日本郵政も当然その経営資源を有効活用しようと最近ようやく再開発に乗り出し、JPタワー、KITTE(キッテ)のブランドで東京丸の内を皮切りに、名古屋(来年六月十六日開業)、博多(来年春開業予定)と商業ビルとしての活用を進めています。
勿論日本郵政には不動産開発のノウハウはなく、丸の内のJPタワーは三菱地所と共に開発してテナント誘致ノウハウの吸収を図っています(現状丸の内のJPタワーの集客力はまだまだ不十分な印象を受けます)。日本郵政にとっては、他のデベロッパーの大型開発による供給過剰や政府からの介入リスクに加え、そもそも人口減少の中、全国に保有する土地が本当に簿価並の価値があるのか不明でもあり、土地活用(いわゆるCRE)を成長戦略の柱にできるかどうか、難しいところかもしれません。
集中と撤退と ~ 均衡アル発展?
国土全体の価値向上・再開発の観点から言えば、先般七年ぶりに国土形成計画が見直され、今後十年の指針となりました(八月十四日に閣議決定)。「コンパクト+ネットワーク」を基本に、地域の個性を磨いて活発な「対流」を起こすと記載されており、そこには新しい国土計画の考え方が盛り込まれているように思われます。
もともと日本は戦後の池田隼人内閣以来、全国総合開発計画(現在の国土形成計画)を策定し、「国土の均衡ある発展」を目指して全ての地方を同質化してきました。そのスローガンの下に高速道路を整備し、新幹線を作り、環境対策を行い、そのポリシーは「一億総活躍社会」なるものにも現れているように、今なお均質・平等な成長という守るべき価値とされているようです。
時代は人口減少に突入し、国家の成熟化に伴って価値観やライフスタイルも多様化しています。地方の価値も、均衡ある発展というよりは、それぞれの価値観を提示して独自性を訴求した方が適切でありましょう。元々はなかった「国土の均衡ある発展」という文言が今回の計画で復活したのは道路族の二階俊博総務会長の意向といわれていますが、「これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展を実現」というやや意味不明な表現に、政治家に挟まれた官僚の皆さんの苦渋の対応が目に見えるようではありませんか。
日本でも東京、特に横浜から都心までの東横線沿線などは今後も人口が増え、需要が高まるといわれています。一方で地方は地方なりの活性化があるはずで、均衡ある経済成長を追い求めない在り方が、その地域の独自性を際立たせ、逆に経済性を担保するかもしれません。
人は土地に根付いて生きていく生き物ですが、土地活用も成熟化・多様化の時代に入っています。旧日本軍の時代から撤退戦が苦手な日本ですが、各地域が大きな将来の青写真を描き、その上で個々の開発を行っていくことが政治の役割であり、不動産開発(広い意味での都市開発)の喫緊の課題であると思われます。
編集後記
ご縁をいただき十一月に皇居の勤労奉仕に参加させていただきました。四日間のご奉仕の中、普段と違う新鮮な環境で物事を考えることができました。
そんな変わらぬ時の流れの中、今回は不動産開発というテーマに触れています。東日本大震災以降の東北や多くの地方を見るにつけ、そもそもの国土開発に対する「考え方」自体に疑問を感じています。どこも金太郎飴のような日本ではなく、世界に位置づけた新しい日本の在り方を実現していってほしいと願ってやみません。
早いもので今年も師走を迎えました。皆様何卒よいお年をお迎えください。