ミレニアル世代とその次
日本はさておき、人口増加が進む世界において、新しい世代をどう取り込んでいくかはビジネス上の大きなイシューと言えます。マーケティングで若者世代を表現するとき、ミレニアルとジェネレーションZという言い方がありますが、耳にされることはあるでしょうか。
ミレニアル世代は一九八〇年から二〇〇四年頃に生まれたパソコンネイティブ世代、二五歳を境目にヤング・ミレニアルとオールド・ミレニアルに分かれます。ジェネレーションZは二〇〇五年以降に生まれたスマホネイティブ世代、アメリカでは両カテゴリーで人口の過半数を占め、世界では合計二十億人を超えるといわれます。今後の消費を支える最も重要な層と言って問題ないでしょう。
ミレニアル世代(米国)の特徴は、八五%がスマートフォンを所有し、七八%がモノよりも経験にお金を使いたいと感じているということです。テクノロジーは生活の一部であり、常にスマホと一緒の生活を送ることもそれまでの世代と違う点でしょう。フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグはミレニアル世代の代表的人物ですが、ソーシャルメディアが大好き、ヤングミレニアルの三二%がトイレやお風呂でもソーシャルメディアを利用し、オールドミレニアルの五一%が職場でもソーシャルメディアを利用しているといわれています。
一方、ジェネレーションZ(米国)はどのような特徴を持つのでしょうか。高校生の五人に四人は同級生よりも自分の方が意識が高いと思っていること、社会貢献に興味があり、十六-十九歳の二六%がボランティア活動に参加していること、高校生の六一%がいつかは起業したいと思っていること、五二%がYoutubeやソーシャルメディアを学校の宿題に利用していること、十三‐十七歳の二五%が二〇一四年にFacebookを止めていること、四一%が一日に三時間以上パソコンを利用していること、十人に九人が将来への不安を感じていないことなどが分かっています*。
サブスクリプション・モデル
今の若い世代をターゲットにした、例えばNetflixやSpotifyに代表されるサービスは殆ど月額一定料金を課金するシステムを取っています。シェアリングエコノミーやSaaS系サービスが増え、モノを所有する時代から利用できればよい時代へと移るにつれ、こうしたサービスの「サブスクリプション(月額課金)化」は進んでいくようです。
そもそもミレニアル世代以下の若い世代は所有よりも利用、モノよりも体験を重視します。企業がターゲットごとに個別化された、優れた顧客体験を提供するにあたって、サブスクリプション・モデルであれば、アカウントごとに購入履歴や閲覧履歴などの顧客データが大量に集まります。そのビッグデータを使って、各顧客に対する最適なサービス展開を効率的に行うことができるのです。
バーチャル・クレジットカード
サブスクリプション・モデルに不可欠なものといえば、クレジットカードでしょう。クレジットカードのあり方も時代の流れを受けて変化が見られます。
先日、米国の投資銀行ゴールドマンサックスがクレジットカード事業に参入するという報道が流れました。ゴールドマンサックスは近年、オンライン融資プラットフォーム「マーカス」によるサービスを開始しており、現在消費者金融に注力しています。
そのゴールドマンサックスは今年一月に「Final」というフィンテック・ベンチャーを買収しました。Finalが開発したクレジットカード「Final」はクレジットカード番号をバーチャルに量産できる点に特徴があります。Finalを使用することで「Amazon用」、「Netflix用」とサービスに応じた個別のクレジットカード番号を無限に生成することができ、万一あるクレジットカード情報を抜き取られた場合でも、他のサービスに影響しないというメリットがあります。
若い世代が台頭するにつれ、課金モデルも決済ツールも進化を続けています。当たり前ではありますが、消費者像が変わるにつれ、サービスの付加価値、提供方法、決済ツール全てが変化していき、新しい顧客体験を実現します。日本では少子高齢化が進みますが、世界の潮流にも目を向けていく必要があります。
編集後記
このニュースレターも本号で四十回を迎えました。こうして継続できるのもお客様のご支援あってのことと御礼申し上げます。
今回は新しいといっても既にかなりの影響力を持っているミレニアル世代、ジェネレーションZを取り上げ、ビジネスモデルへの影響を考察しました。変化の激しい時代において、自分の育った時代背景を「当たり前」とみなしてしまうと、瞬時に時代に取り残されるという恐ろしさを感じます。
時代の変わり目に立つということは自覚しなくては分かりません。面白い時代に生きていることを自覚し、常に新しい変化へと挑戦していきたいと思います。